EU離脱後のイギリスと人材採用
Posted 19th February 2020 • Written by TeamJapan
はじめに
紆余曲折あったBrexit(ブレクジット)ですが、ご存知の通り、ついに2020年1月31日をもって英国はEU圏を離れました。最後まで逆転があるのではないかとも言われていましたが、ビジネスはこれまでの経過に振り回された感があり、この話題には去年春頃からすでに話題に上がらなくなっていた気がします。最終日の1月31日もシティは普段通りの印象を受けました。とはいえまだしばらくは移行期間が続きますので、イギリスがEU離脱したことを本当に感じるのはまだ先になります。
日本語を話す若手人材として、日本からのワーキングホリデーがあります。英国では正しくはYMS=ユースモビリティスキームと呼ばれ、2年間の就労可能なヴィザを取得することができるスキームで、毎年詳細についてのアナウンスがありますが、今回に限りYMSスキームの発表は非常に遅く、制度が廃止されるのではないかと懸念したほどでした。もしかしたらこれもBrexitの影響の一つであったのかもしれません。
今後の展望
さて、今後は原則としてEUと英国の間での自由な人材の行き来に制限がかけられることになります。最終的にどのような形になるかはまだはっきりしていませんが、例えば弊社チームジャパンの場合、これまでドイツ、フランス、オランダ等の出身で日本語を勉強しイギリスで日本関連の仕事をしたいと希望する登録者の数は以前より減少しており、英国で働くということをEU圏の人材が選択肢として気軽に考えることができない状況にすでになっていると言えます。
英国で働くためのヴィザの雇用者側からのスポンサーシップについても、条件となる年収の下限額が引き下げ等も検討されるなど、英国政府としても今後の国外からの優秀な人材の確保のために対策中ですが、その他のヴィザも含め移行期間中は英国ホームオフィスの動向を逐一追う必要があります。ヴィザの最新の情報に関しては必ず専門のアドバイザーに確認することを強くお勧めします。
英国でビジネスを行う側からしてみると、2020年2月現在イギリスの景気自体は陰りがなく、経済指標の一つである住宅の価格も再び上昇傾向にあります。楽観はできないものの、堅調にやっていけるのではないかという見込みです。
とにもかくにもブレクジットの結論がついたところで、企業はこれまで保留としていたビジネスプランを再開・発展させ、それに伴い人材雇用も出てくるのではないかというのが2020年の人材採用に関しての予想です。英語・日本語に堪能で専門性の高い人材は常に不足しています。採用者側もこれまで以上に柔軟な姿勢で人材マーケットを見る必要があります。
人材市場への影響
例えば、英国での市場開拓に欠かせない人材である営業職は、英国や欧州の事情には通じていても日本語力はもちろん、日本の商習慣の知識もないかもしれません。また日本企業に人気の高いJET(The Japan Exchange and Teaching Programme―日本で英語を教えるプログラム)出身者は、日本社会への理解や日本語能力がありますが、社会経験が浅く即戦力にはならないかもしれません。全てを満たす候補者を見つけるのは難しく、職務の中で優先順位をつけ、不足している点は他の方法で補うことが必要です。
2019年は日本企業ではホンダ社をはじめ自動車関連産業などが英国からの撤退/ヨーロッパへの移転でオフィス閉鎖の準備を進めはじめました。その一方で英国でのビジネスを新たにスタートさせた日系企業もいくつかあります。ロンドンの中心産業は金融だけでなく、コンサルティングファームや専門アドバイザリー、デザインなどのプロフェッショナルサービスでもあり、こうした専門性ととテクノロジーが結びついたユニークなテックカンパニーなどへの参画・買収などで日本企業がロンドンに出てくる機会は今後も増えるとみています。